一連










優しいなんて言わないで

可愛いなんて言わないで

頼りになるなんて言わないで

私に…期待させないで…

期待しないで


もう哀しいのは嫌なの


私は誰にも求められたくない。




が好きだよ』

、可愛いよ』

は頼りになるから』

が僕を満たしてくれる』




貴方の口から溢れ出す愛しい言葉。


貴方の口から溢れ出す言葉が私を悲しみに誘い込んだのかもしれない。


貴方の口から溢れ出す言葉が私に好きという感情を教えてくれた。


貴方を愛することができた。


愛してしまった。






なのに、貴方は私を独りきりにする。


それでも私は貴方が大好きです。




何故貴方は何処にもいないの?

どうしてなの?




私を残して何処へ?




……総司は死んだ』



初めてその言葉を聞いたときは何かの冗談だと思った。


声の主は斎藤さんで少し声が震えている。



「……斎藤さん?」


『総司は…もういない』


「そんな…わけ…そんなわけないもん!!総司は!!総司は……生きてる……」


弱々しい声で言う。


斎藤さんは悪い冗談を言う人じゃない。

分かってるけど…


勝手に…



…落ち着いて聞け…総司から手紙がある、 宛てだ…総司の懐から見つけた…』


「そんなのいらないっ!!総司は生きてるんだからぁ…」


斎藤さんに支えられた腕を荒っぽく上下にし、斎藤さんの腕を掴む。


斎藤さんの顔は霞んで、歪んでいてあまり見えなかった。




「……ぅっ……あぁぁぁぁ!!」




っ……』



初めてこんなにも大きな声で泣いた。


斎藤さんは何も言わず受け止めてくれる。



「総司っ!!」




『アイツはいつも笑っていた、アンタの話をすると優しく、楽しそうに笑っていた』


優しい声で言う斎藤さんが近くて…でも本当に聞きたい声はもう聞こえないくらい遠くで…


切ない。



「…っ……」


『斎藤、 を部屋へ連れて行ってやれ』


掠れる声で言うのは土方さん…


『はい…』



みんな同じなんだ。


総司がいなくなっと寂しい、悲しいはみんな同じ。


なのにどうして私だけこんなにも感情をさらけ出し泣いているんだろう?


情けない…申し訳ない…


私だけ……
私だけ……




頭の中はそう言っているのに涙が止まらないのはどうして?

枯れそうな声が出るのはどうして?




軽く斎藤さんに手を引かれる。


「土方さんっ…総司はっ…どうして死んだんですか?!
どうして総司が死ななくちゃ駄目なんですか?私は殺した相手が憎いっ!!なのにどうしてっ!!みんなは冷静でいれるの!?」




総司を殺した相手は土方さんじゃないのにキツく睨んでしまう。


『総司は……武士は…全ての武士はいつも死を覚悟し戦に飛び込んでんだよっ…
総司も同じだ……同じ人間を殺すならアイツだって同じ人間に斬られる覚悟はしている…
総司の死は憎むものじゃねぇっ…敬うもんだっ!!』



拳を握りしめて言葉を発する土方さんは酷く哀しくて、悔しい表情だった。


「でもっ…」



その志を持った総司と一番近くにいた私が……志を持ったみんなといた私が…わかったような口きいて……

総司の志を無駄にしようとしてた……




「ごめんなさいっ……」

土方さん…謝ることしかできない私を許して下さい。

土方さん……みんな……総司……



優しく優しく頭を撫でる大きな手はどことなく総司に似てる気がする。




『謝ることじゃねぇよ』



見上げると優しく微笑む土方さんがいる。



『俺だって悲しいよ、どんなに敬おうと総司に戻ってきて欲しいと思う』



「…はい…」


『そんなに泣いてたら総司にとり憑かれるかもしれねぇぜ?』


そう言い残し振り返り去っていった土方さんの瞳に涙が見えた様な気がした。




、行こう』


「斎藤さん、ありがとうございます、私なら大丈夫なんで…」


『ならば、これも持って行け……総司が自分に何かあったときにと…
お前宛てに書いたものだからな…総司が肌身離さず持っていたに違いない』



「ありがとうございます」



くるりと踵を返し歩き始める。


向かった先は自室ではなく愛おしい総司の部屋。


ゆっくりと襖を開けると彼の香りがして、また私の瞳を潤ませる。


「昨日も此処でお喋りしたのにね……どうして貴方は居ないのかな…?」


音を立てずに襖を閉めると少しだけ光が暗くなった。


「もしかして悪戯してるの?隠れて私がどんな様子か見ているの?」


彼に話しかけても姿を見せなくて私の声が静かな部屋に虚しく響いた。


「此処でっ…此処で口付けだってしたのにっ……総司ぃ……」




彼からの手紙をキュウッと握りしめる。


彼想い、名前を呼ぶと涙が溢れて前が見えなくなる。



「手紙、読むね……」





いくら貴方の死が立派だとしても、
あの愛おしい時をもう一度……と願っては駄目ですか?


願う私は不届きですか?

――願わくは……愛おしい貴方が…今でも私の傍に居ることを……