お天道様








ついこの前、 と恋仲になった。

今、外は真っ暗で恥ずかしながらも俺は を部屋へ招いている。


はさぁ……俺が居なくなったらどうする?』

コロコロと畳の上で寝ころんでいた俺は仰向けの状態で を見る。




「え?」




『もし、俺が居なくなったら はどう思う?』

もう、長くないかもしれない。


もう直ぐ……砂になって散るかもしれない……

折角… が俺を見たのに…

「どうしてそんなこと言うの……?
…嫌だっ…嫌だよっ!!平助くん……そんな事言わないで……お願いだから…」



今、 がすごく不安定なことは分かってる…。

はもう直ぐ俺が居なくなることを察ししはじめている……。


これ以上 を不安にしては駄目だって……俺ん中で分かってんのに……



だけど、知りたいんだ…



俺が居なくなったら が哀しんでくれるのか。




『冗談だよ』




喉に何か詰まったようだった。

このたった四文字の言葉を発するのがツラくて……。

涙を流す がどれだけ俺のことを思っているかなんて知っているはずなのに


…もっと…もっと…… からの思いを実感したかった…。


死ぬ前だからかな?

物欲が激しくなる。

が欲しい。

もっと生きたい……






と一緒に……穏やかな生活を送りたい… と人生を添い遂げたい。






『ごめんな、こんなこと聞いて』

俺の胸で泣く を引き寄せた。

「私もごめんね…泣いちゃって」

『いーや、 が俺のことどれ位好きか分かったから嬉しいよ』


涙に濡れた の頬に手を当てる。

『俺さ、今までは のこと好きだった…けど……今は…愛してる』


「……っ………」


また、瞳に涙を溜める。



「……私も、愛してるっ……」 







  ┓
 愛
 し
 て
 る







その言葉に顔が緩む。


そんな が愛おしくて…俺のために涙を流す が狂おしい程に可愛くて……優しく口付けた。

「…ん……」

…』

少し唇を離すと荒く息をする。

「は、ぁ……平助くんっ」





いつもよりも、深くて、荒い口付けに戸惑う


「どう、したの?」


『いいか?』

を1人にしたくない、いや…したら駄目なんだ。


「うん」

初めて、 と身体を重ねた。

どうしたらいいか分からない。

ただ一つだけ分かるのはお互いを愛し合っていること。

熱い身体がそう語る。






回数を重ねないと命は宿らないかもしれない。

だけど、偶然かもしれない、必然かもしれないけど、命は宿った。


俺は必然だと思う。

死ぬ前くらい願いをかなえてくれても良いじゃないか。

「平助くん…やったね!」

『あぁ…まだ、全然実感無いけど…俺、父親になったんだな!!』


「うん!」

土方さんやみんなに報告に行った。

みんなの言葉はそれそれだけど、きっと祝ってくれる気持ちは一緒だと思う。

きっと憐れみの感情も入っていたと思う。

いいんだ。
が独りにならなければ。






日にちを重ねる度に、 の細かった腹部はふっくらしていた。



「わっ」

『どうした!?』

「ふふっ、そんなに反応しなくても」

楽しそうに、嬉しそうに が笑う。

『な、なんだよ』

少し照れながら言う。

「今ね、赤ちゃんが動いたの!」

『マジで!?触ってい?』

笑顔の がコクッと頷く。

ソッと刺激しないように の腹部に触れる。

『うわっ、本当だ…すげーよ!なぁ、 !!』

「すっごく、元気なんだよ!!」

『あ、まただ!!』







元気良く の腹を蹴るその子が を守ってくれますように。







部屋に甲高い赤子の声がする。

「平助くん、この子の名前を考えないと」

『あぁ、俺に考えがあるんだ』

「何?」

『“だい”』

「だい?どうやって書くの?」






『太陽だよ』






「太陽?」




『あぁ、“たいよう”と書いて“だい”
いつでも明るく、元気で……俺がたいようの下をあまり歩けないから太陽を見てこれからの人生歩いていく』



お前を守ってくれるようにそう願い、太陽の頬撫でた。







「太陽、そっちにいっちゃ駄目だよ」

小さな身体で走ってくる。

『ねぇ、お母さん!!僕のお父さんってどんな人なの?』

「あははっ、どうしたの?急に」


『僕、お母さんのこと大好きだから、お父さんみたいになりたいの』



「………あなたのお父さんは、立派な人だよ、少し弱虫なとこもあったけど…
すっごく勇敢で明るくて元気で……あなた…太陽とそっくり」


『今、何処にいるの?』

「何処にいるのかなぁ?お母さんには分からない」


『お名前は?』


「藤堂……平助っ……」


『お母さんと僕と一緒の名前だね!!…お母さん?……どうして泣いているの?』


「お父さんに……会いたいね…」


『うん!!だから僕、良い子にして待ってる!!
お父さんに負けないくらいの男の子になってお母さんを守る!!じゃぁ、会いに来てくれるかな?』


「うんっ……きっと…会いに来てくれるよ……」




平助くん…

見てくれていますか?

何処にいるか分からないけど、太陽はこんなにも立派な事を言ってくれています。

貴方は見ていますか?

その時ひゅうっと優しい風が吹いた。

平助くんが何処にいるかは分からないけどきっと…

傍に居てくれてるよね……

これからも私達の幸せを願っていて下さい。

優しく頬を撫でた風はまるで平助くんの手のように温かかった。



『お母さん、泣かないで?』

「嬉しくて泣いているのよ?太陽が居てくれてよかった」