じゃれあいの中での愛情。







この小説のタイトルは《じゃれあいの中での愛情》です。
だけど、こんな微笑ましいタイトルなのに全く微笑ましくありません。
そう私は思います。

この騒動はある人物の一言で始まった。








『暑いよね』

「はい…」

『暑いぜ』

『はい……』

『暑いな』

「はい………」

『暑いよな』

「はい…………」







『うるせぇんだよ!おめぇらは!!』






夏。








屯所の中で一番涼しい場所に集まるみんな。

猫みたい。


いくら一番涼しいとはいえこの人数が同じ所に居れば暑い。






幹部ほぼ全員。





『ちょっと、土方さん…怒鳴らないで下さいよ…暑いんですから…
それ以上暑苦しいことしないでください』


『総司ぃ…おまえな』

「土方さん…落ち着いてください」




『どうにかなんねぇの?この暑さ!!』

『新ぱっつぁん、どうにかなるなら始めからやってるよ』

あまりにも暑くて目の前がクラクラする。


『あ゛ー!!イライラしてきた』

『水被りてぇ!』


『……水?』


『あぁー!!』


『『川に行こう』』

永倉さんと平助くんが言ったのだ。


直ぐに支度を初めた。


すぐさま川へ直行。

『うぉー!川だ』



「わぁ……綺麗」



そう、私が癒されていると平助くんね声が聞こえた。


『あー!ヤベーよ!! !!』


「え!?どうしたの?怪我でもし…」


その光景は、【水遊び】には相応しい格好だと思う…。




多分。





でも、ちょっと……いや大分と私には刺激が強すぎた。


『あれ?どうした ?』


『平助、ダメだよ… ちゃん困ってるよ?』


そう言う沖田さんが私の肩を後ろから掴む。


『何だよ、総司ー。俺らのどこがいけないんだよ』

『格好だよ、女の子の前で褌はマズいんじゃない?』


「あ、沖田さんありがと…」


何ですか!?

その格好!!




『あ、総司の格好もアウトじゃね?』


『どうしてさ、下は袴ちゃんと穿いてるよ?』


いやいや…上半身を露出しすぎです!!


セクシーすぎです。


『もぅ… ちゃんはワガママだなぁ……土方さんみたいにしろって言うの?』


「……土方さん……?」

沖田さんが指差した方向を見る。


『総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ
総司くたばれ』



何ですかー!?


土方さんが滝にうたれてる!


あそこ、別世界ですか?

ここ明るいはずなのに、土方さんの所だけ暗いですよ?


『つか、ここに滝なんかあったけ?』


何か平助くん冷静ー!!

ていうか、総司くたばれって言ってますよね!?



何の修業ですか!?


肌は露出してないけど別のものが露出しちゃってますよ!

沖田さん聞こえないんですか?


『土方さんも趣味が悪いや』


そう言って沖田さんは足元の小石を拾う。


『おい、総司やめとけって!』

「あ、おきっ」

私が名前を呼ぶ前にすごい勢いで小石が飛ぶ。


その、小石は見事に土方さんの眉間に当たり、
土方さんは岩の反対側に落ちていってしまった。


『あれ?ただ石投げしたかっただけなんだけどな、
土方さんがあんなところにいるとは思わなかったなぁ、あはははっ』


岩の後ろから揺らめいて出て来たのは土方さんだった。


小石が当たったはずなのに
土方さんの眉間は岩が直撃したかのような跡と、血が滲んでいた。


その姿は……まるで……


『わぁ、 ちゃん、あんな所に幽霊がいるよ!!本当にいるんだね』

そういえば土方さん何着てるんですか?

死に装束ですか!?

『ひっ、土方さん怖ェよ』


髪留めがとれて髪がだらんと垂れている。



正に幽霊。



『総司ぃぃぃぃ!?』


『あれ?僕を呼んでる?僕って結構霊感あったんだな』



「土方さん……ごめんなさい!!」


ユラユラと私の後ろの沖田さんに向かってくる土方さんに思わず逃げてしまう。


『あははははは!!土方さん怖いって言ってますよ』


『総司ぃぃぃぃぃぃぃ』


「あっ、うわっ、お、沖田さんっ離してください」


ちゃん…逃げちゃダメだよ、あれも土方さんの一部なんだ、
受け止めよう?』


沖田さんは切なげに言う…土方さんとのお別れを惜しむように。


土方さんは私の前まで来た。


血と水の雫が髪に滴っている。

「あっ、あのっ!私、土方さんを怖がってるとかそういう訳じゃないんです!えと、」


『ダメだぜ、 …土方さん聞いちゃいねぇよ』


「原田さん……!!」


いつの間にか来たのか、石場に座っている原田さん。


『総司っ!』


斎藤さんが血相を変えて飛び込んでくる。


『あ、一くんも左之さん今来たんだ、遅かったね』


「沖田さん!それどころじゃありません!」


『どういうコトだ!!総司っ、副長が!副長がっっ……何故こんなお姿に…』


あれ?斎藤さん、もしかして土方さんが亡くなったと思ってる?

『一くん、土方さんは死んでないよ』


『何を言っている!!この服装はっ……っ……』


斉藤さんのことは


『ま、いっか』
の一言で終わってしまった…。


頭を抑えて斎藤さんは石場に座り込む。


『斎藤…落ち着け……このご時世、土方さんも死は覚悟してたさ……
さぁ…斎藤も冥福を祈ろう』



永倉さんっ!!やめてあげて下さい!


『総司…テメェ……何しやがる』

片目しか見えない土方さんが沖田さんを睨みつける。

『ヤだなぁ、石投げしたらちょうど土方さんが其処にいたんですよ…
あ、もしかしてワザとですか?実はMなんですか?土方さん』


あなたはSですか……?沖田さん。


『なわけっ…』


土方さんが言葉を発した瞬間…

土方さんが倒れていく。


『どうしたんですか?土方さん。あれ?本当に死んじゃいました?』


「ち、違いますよ!!
この暑さで水分もとらずにすごい勢いで走るから脱水症状と熱中症ですっ」


『なにっ?土方さんは助かるのか?』

落ち込んでいた斉藤さんが駆け寄ってくる。


「はいっ!直ぐに日陰に運ばないと……手伝ってもらえますか?」



『あぁ!協力しよう』




応急処置をして約一時間。


私の膝に寝ていた土方さんが目を覚ました。

「あ、お気づきになりましたか」

『ん… ………?』


「はい、お水のみます?」

コクンと頷く土方さんの口元にコップのふちを近づける。


その光景にみんなは安心したのか笑みがこぼれた…
ように私には見えた。


『土方さーん!大丈夫か?俺らと遊ぼうぜ?それとも寝てる?……ずっと』


『もう少し横になってる』


『土方さん…たまには嫌なことわすれてパァッと遊ぼうぜ?………本気でな』

ん?平助くん?原田さん?


『寝るっつってんだろ!』


『ははは、土方さん……抜け駆けはダメですよ…?
さぁ、僕たちと遊びましょう……ね?』


その後の光景はあまり語りたくないので言わないで置こう。