貴方の心と私の心










ーお前今日居残りだぜ?なーに帰ろうとしてんだ!』



原田先生が私を呼ぶ。


行きたくない…


「今日は…用事が…」

『ねぇだろ?んなもん…家に連絡入れといったぜ?』




…………言い訳失敗!!









無理だ…

無理だよ!!

先生と二人きりとか…

緊張して…



トントンと誰かが私の肩を叩く。


「んー?‐‐‐あ」


『やぁ』

「お…沖田先輩…」


『こんにちは ちゃん、そんな露骨に嫌そうな顔しないでくれる?
いくら僕でも傷つくなぁ…それより良かったね左之さんと二人きりなんでしょ?』


そう彼は耳打ちする。

私の気も知らないで!

『じゃぁね』


『おい、 !いくぞ』

「先生…気分悪いんで保健室行ってきます」

『あ! !今行かない方がイイぜ?
山南さんに怪しい赤色のドリンク飲まされるらしいぜ』


「平助くん」


どうして…


保健室ってのは何のためにあるんですか!?


『どうしたんだよ?もしかして居残り?』


「うん…」


『じゃあ俺が待っててやるよ、一緒に帰ろうぜ?』


「うん!ありがとう」


私の声を遮るくらいの大音量で放送が流れはじめた。







《平助ぇぇ!!今オメェどこなんだぁ?!》








『………』






「………」










『ヤッベぇ…今土方に追われてるんだった!』


『あ、平助!見つけたぜぇ!!』

『うお! わりぃ!先帰っとく!!』


え?



待っててよ…


平助くんの背中が小さくなる。

『早くこい』


「はい…」






『そこはそうじゃないって!何回言ったら分かるんだよ…』

「…だって」


近いんだもん…


『何だ?』


「しんどいー」


『何だよ…言い訳にもなってねぇじゃねぇか』


「何時までするんですか?」

この緊張は…




『そろそろ帰るか?随分遅くなったな』

「帰って良いですか?」



『お前…そんなに俺のこと嫌いか?』


「え?えっと…」


『避けるし、嫌がるし、二人きりになったら無言になるし』


「そ、そんなことっ!!」


『何だ?』


「~~っ」


『…』


「むしろ……」


『え?』


「やっぱイイ!!ごめん!さようなら」


そういい、すごい勢いで教室を出る。


『何だよ!待てって!』


『うお! !』


『あ、新八!この教室の鍵閉めとけ!』


『左之!!何だよお前ら!』


「うわぁぁ!ついてこないでー」


『むしろ何だよ!気になるじゃねぇかよ!しかも期待しちまう!』


え?


期待するってどういうこと?


パッと足が止まる。


『うわっ!!急にっ』

見事に振り向いた私に先生が激突する。


『わ、わりぃ!大丈夫か!?』


「ん…だい、じょうぶ」


上を見上げるサラサラと先生の綺麗な髪が落ちてくる。


「わっ」


『なぁ、俺さ、生徒にこんな感情抱くの変かもしんねぇけどお前が好きなんだ…
俺…どうしたらいい?』


「っっ!」


『お、おい!何で泣くんだよ!?俺何かしたか?あ、痛かったか?大丈夫か?』


わたわたと慌てる先生を無視して“私も”の後に言葉を続ける。


「すき…」


『は?』


「だーかーら好き!!
私も先生のことを好きになるなんて可笑しいと思ってた…
だから、今日もまた先生のこともっともっと好きにならなきゃいけないんだなって…
もう、これ以上好きになりたくなかった…辛いのは嫌だったの」


…すまねぇな…早く気づけば良かった…俺もずっと好きだった』


「うん…」


『っと…わりぃな、ずっと上に乗ってて…って!外暗っ!!』


「あ、ホントだ…」


『これは送っていくしかねぇよな』


ニコッと笑って私の手を引く。

「え?」


『家まで送ってやる』

そういって、学校の駐輪場に行く。

1つのサビレた自転車をとりだした。


「先生っていつも自転車で来てるの?」

『ん?あぁ、これか?新八のだ』


いいのかな?


勝手に使って…


それでも先生はニコニコと笑ってる。



、早く乗れ』


「あ、ありがとう」


『よし!いくぞーしかっり掴まっとけよ!』


キュッと先生のスーツを掴む。


あれ?先生ってこんなにも背中広かったけ?


すごく、顔までの距離が遠い。


毎日見てたはずなのに、角度によって違う先生が見れる。


先生の背中に顔を疼くめると少しタバコの匂いがした。


きっと土方先生の匂いだ。


愚痴でも聞かされてたのかな?

沖田先輩とかの…

で、新八先生が殴られてるの。



「ふふっ」


『ん?どうした?』

「先生カッコイイ…」



『……』



「ねぇ、好きだよ」



『……』



「聞いてる?」


『聞いてるよ!恥ずかしいじゃねぇかよ…』


「本当だよ?大好き」


急に自転車の動きが止まる。


「どうしたの?」


後ろに乗っている私の髪を優しく撫でキスを落とす。


そして上目遣いで此方を見る。


『俺も好きだぜ…』


「せん…せ」


これはかなり照れる…


ヤバい…


『聞いてんのか?好きだぜ?』


グンと先生との距離が縮まる。


「先生!ヤバいよ…心臓がすごく早い!」

『緊張してんのか?ま、俺もだけど』


私の手をとり先生の服の中に私の手を入れる。


地肌の温度が分かる。


それよりも心臓がすごい鳴ってる。


「先生でも緊張するんだ」


『当たり前だよ…つか、その先生ってやめようぜ…お前と俺は付き合ってんだし…』




「なんで呼べばいいの?」




先生の口が私の耳元にくる。








『左之介…』







そう耳打ちした。


「うん、左之介」


唇をくっつける。



もちろん、唇に……